ナショナルトラストNational Trust

美しい自然や歴史の舞台を愛する人たちにとってナショナルトラストには感謝して余りあります。この組織無くして、このような場所の多くはすでに消滅してしまったことでしょう。

ヴィクトリア時代(19世紀)、容赦ない工業化の波は英国の片田舎にも押し寄せ、これに対処するために1895年設立されたのがナショナルトラストです。その発起人は弁護士ロバート・ハンター卿、社会改革者オクテイヴィア・ヒル、聖職者ローンズリーの3人で、英国の国家遺産を保護保存することとそれらを一般大衆にもっと親しんでもらうことを共通の目標としていました。なかでもカーライル大聖堂とクロスウェイト教会の聖職を兼ねていたローンズリーの貢献は大きく、彼はこうした工業化の湖水地方への脅威を憂い、既にフットパス(footpath、多くは私有地の中で一般の人々が歩けるように開放された小径)の保護や田舎の楽しみ方の普及に活発に取り組んでいました。1879年貯水池建設に原因するサールミア湖の氾濫の後、環境保護を確実に行うには土地を完全所有する以外にないとの確信を強めていきました。

ナショナルトラストの目的は、自然環境の美しい地域と歴史的意義のある場所を獲得、保存し、国家から管理を任された財産として一般大衆へも公開することにあります。そうした財産の一部は購入によるものですが、多くは寄贈されたものです。今日ではナショナルトラストは英国最大の土地所有組織の一つに数えられるだけでなくその保存救援活動も非常に活発で、イングランド、ウェールズ、北アイルランドを通じ(スコットランドには1931年設立の独自のナショナルトラストあり)総計892kmの海岸線を含む253,176ヘクタールの土地と300を越える歴史的財産をその保護下に置いています。更に、一旦ナショナルトラストの所有となった土地は変更が難しく、1907年の議会立法では、その財産を譲渡できないことを宣言する権利がナショナルトラストに認められ、争議が起こった場合は議会に直接訴え得ることが保証されています。

魅力に富んだ田舎の環境を保存することと一般大衆への開放を促進するという二重の目標を達成することはこの大量輸送時代容易なことではありませんが、ナショナルトラストは私有地のフットパスや誘導標識を整備した小径を新たに造りながら、一方ではスタイル(stile、人間だけが柵を越えてゆけるように作った小階段)や歩行者専用橋の保存に努め、増える一方のフットパス侵食問題と闘っています。ナショナルトラストの会員登録もできます。

 


ランブラーズ・アソシエーションRamblers Association(散策者協会)

田舎歩きを楽しむ人たちの権利と利益の保護拡大において、ランブラーズ・アソシエーションほど活動的な組織はほかにありません。「田舎をもっと知り、愛し、大切にする心を育む」「美しい自然の中の道や区域に対する一般の人々の権利を保護促進する」「より多くの人々に田舎を楽しんでもらえるよう尽くす」「歩くことを健康で楽しいレジャー活動としてさらに普及させる」など、その趣旨は明確です。

1931年、散策者連盟全国評議会(National Council of Ramblers Federations)が設立されると、それまでロンドン、マンチェスター、イングランド中部などで結成されていた数多くの連盟が協力し1935年、当時問題になっていたフットパスの消滅や閉鎖、山間部や荒野からの一般人の締め出し、地主との敵対関係、などに対処するためのもっと有力な圧力団体として作られたのがランブラーズ・アソシエーションです。

この頃は一般の人々によって所有地侵害が行われた時代で、時には一般散策者と狩猟地管理人との激しい対立が、ことにピーク地方のムアランドと呼ばれる荒野を中心とする地域で生じていました。

この頃からランブラーズ・アソシエーションは、国立公園化を支持し、長距離フットパスを指定、誘導標識の設置を促進し、国内のフットパス網の維持発展に大きな役割を果たしてきました。

田舎を歩く自由はまだ私たちにとって確立されたものではなく、常に注意を怠ることはできません。不法に閉鎖されたり、使用頻度が低いために消滅したり、家屋道路などの建設のためなくなったり、等々、フットパスの永年の問題に加え、いつ何時新しい危険が持ち上がるかわかりません。

ランブラーズ・アソシエーションが、田舎歩きを楽しむ皆さんのために存在する意義はこのような問題や危険に対処することにあるのです。


フットパスでの注意事項

基本的に次の2つの道があります。

 

1.   フットパス(Footpath)=歩行者のみ通行可

2.   ブライドルウェー(Bridleway, 馬道)=歩行者、騎乗者、自転車のみ通行可

 

ほかにバイウェー(側道)といって、農道などの少し広い道で、交通は頻繁ではありませんが自動車も通れる道もあります。

これらの道の中には数百年から2000年以上使われているものもあります。これらの道は多くの場合私有地の中を通っていますので、わきにそれないよう気をつけなければなりません。もし私有地に入り込んだ恐れのあるときは道を尋ねた上、正しい道に戻るようにしましょう。たまにその土地の人と歩行者との間でいさかいの起こることもありますが、概して丁寧に訪ねた場合協力的に教えてくれます。

途中から通行できなくなることがありますが、たいてい畑の中の道で、そこから先が耕されている場合です。法律上農業関係者は、悪天候の場合を除いて、フットパスを耕しても2週間以内にもとの状態に戻せばよいことになっています。この場合フットパスの表示の通りに歩けば農作物を踏んでしまうことになり、迂回して畑の縁を通れば私有地侵入になりますので厄介です。このほか、違法なフェンスや鍵のかかったゲートに阻まれたりした場合、常識の範囲内で迂回するなり障害を取り除いて通るなりする必要があります。もちろん障害を取り除く範囲は最小限にとどめ、迂回が可能な場合極力そのようにしましょう。通行権の交渉に関して問題が生じた場合は、関係機関に報告して、地主に対する処置を取ってもらいましょう。

通行権が法で守られていない道でも歩行者の入れるものが数多くあります。地主が所有地の中の特別のルートに限って一般人の使用を許可したものもあります。この場合問題は、これらの道は臨時に使用を認められているものなので地主側によっていつでも廃止されうるということです。しかし実際にはこれら特別許可された道は、森林委員会などの公的な機関や私的機関でもナショナルトラストなどが所有する土地の中にあるので、所有者が変わらない限り閉鎖される可能性は薄いといえます。

慣習的には、歩行者は未開墾の山間地や荒野を自由に歩くことができますが、地域や季節によって立ち入り制限のある場所があリます。

 


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